エピソード5 本日のゲストはタレントの伊東幹三郎(仮名)さんです。
「目の前に誰かが立っている。ここからです。私たちの恐怖がはじまったのは。今でも絶対忘れることができません。それは、まさしく妖怪です。ここでいったい私は、どうなってしまうのだろうと。そしてこんな事がおこったのです」
経歴
1969年、東京都某区で生まれる。都内の高校を中退後、渋谷でスカウトされアミューズメントの世界へ。
霊感
私が中学2年から高校へ入学したあたりだったと思います。突然目の前に何かわけのわからないものがゆらゆらと。最初は目の錯覚だったと思っていました。ところが、これが次第にリアルに見えるようになってきたのです。
それは動物であったり人間であったり。これって俗にいう幽霊なのか。このようなとらえ方をしていました。
ここから、さらに数か月が経ったころでした。今度は空で輝きながら回転している円盤のような飛行物体まで見えるようになっていたのです。
ここで僕には霊感らしきものが備わっているのがわかりました。
この事を周りの大人や友人に話しても信じてもらえません。“ほら、そこに座っているよ”と言っても見えるのは僕だけですから。
今までいろんな体験をした中で、とっても震えるほど怖い体験があります。それは僕一人だけではありません。もう一人、証人が存在しているのです。
深夜のドライブ
それは2022年の夏の日のことです。この日はいつもより暑さの日差しが強く気だるい時間を過ごしていました。
そんな夜のことです。
この暑さをぶっ飛ばすかのような、こんな誘いを先輩から受けます。
「どうだい。これから深夜ドライブでも。」
そのドライブコースを尋ねると都心です。私にとって最高の誘いでした。それは、今まで一度も都心のネオン街を見ながら車で走ったことがなかったからです。
そして、日がとっぷりと落ちた時刻に私たちはスタートします。走り抜けていくネオンの光景は昼の世界とはまったくちがう顔を魅せてくれました。
想像していた以上にとっても美しく私を特別な迎賓として迎え入れてくれたような、そんな錯覚に陥っていました。
謎の女
そして、首都高を降り5分ほど走ったあと一方通行の道に入った時です。目の前に何やら障害物のような物が確認できました。なんだろうと思いながらヘッドライトを上向きにすると、 そこに立っていたのは髪の長い女性です。
それも道路のど真ん中に。
このような時間になんで立っているのか。普通では考えられません。どいてもらわないと前に進むことができません。ここでパッシングをするのですが、この事態がわかっていないのか。
まったく動こうとはしません。
もしかすると、酒に酔いつぶれての行為なのかと思い、夜中でしたが仕方ありません。今度はクラクションを2度鳴らします。
しかし、これもだめです。
ここで先輩が私にこう言います。
「通れないから、どいてもらうように言ってきてくれないか」
そして私は、常識では考えられない女性のこの行為に、やや立腹しながら車を降りて向かいました。
うつむいたまま顔を上げようとはしませんので、この状態のまま、今のこの状況を丁寧に説明しながら道路脇に移動してもらうことを伝えます。
ところが、同じことを何度か伝えるも、聞こえているのか、聞こえていないのか。反応らしきものがまったくありません。相手のこの態度に、私の感情は高ぶっていました。そして、やや声を荒げこう言います。
「通れませんので、どいてください!」
襲う恐怖
そう言った瞬間でした。
あれほど反応がなかった女性が顔を上げ私の方を見たのです。その顔の前に広げた指が10本。
爪はするどく長く剣のように先がとがっていました。あと一言でも言うと。襲い掛かってくるような、そんな気配を感じていました。獣化した人間なのか。それとも妖怪?
このような不気味さを感じた、その瞬間です。
突然、女は四つん這いになり、その指先のするどい爪は路面に突き刺さるように立てていました。そして、このあと豹が走るかのように、もの凄いスピードでこの場を去って行きます。
その方向へと目を向けると高い塀に囲まれているエリアでした。高さが高さだけに、あの化け物も行き止まりだ。と思った瞬間です。
その壁を難なく飛び越えたではありませんか。
この光景に啞然としたまま、立ちすくんでしまっていました。これは人間技ではありません。
証人
この短い恐怖の時間を私は一部始終見ていました。
ここで、ふっと思ったのが、また私だけの目撃だったのでは。と、そう思い車に乗っている先輩の方を振り向くと、ハンドルを握りしめながら恐怖に震えている先輩が、そこにいたのです。
この体験は私だけではありませんでした。
帰路に就く車の中で、またあの妖怪女が現れたら。そのような会話をしながら無事に家路につくことができました。そのときです。
先輩が明日の昼あの場所の現場検証をしようと、声をかけてきましたので承諾いたしました。
再び
次の朝、劇団に行き昨夜のことを若い連中にこと細かく説明をしましたが、誰一人として信じる者がおりません。そこで半分無理やりでしたがスタントを得意とする3人と現場を訪れたのです。
そして、あの四方に囲まれた現場を見せると。
3人とも口をそろえて、
「これは無理です。中型クレーンがなければ、ここを飛び越えることができません」
でも、確かに登り飛び越えていきました。
あの妖怪女はなんのために。こう思いながら11年の歳月が流れました。あれ以来一度も私の前に現れません。
今回の恐怖の心霊体験は、夜中に突然現れた半妖と思えるような妖怪でした。もしあの鋭い爪で襲いかかってきていたら。と、想像しただけでゾッとします。
最後に
ここから半年ほどが経過しました。特に彼の周りで事件や事故めいたことが起こることはありませんでした。そして3日前のことです。
新たな女性劇団員が加わりました。そして彼に向かいこう言ったそうです。
”私、高いところに這い上がっていくのが得意なんですよ。先輩!”
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