プロローグ
エピソード2 父が他界してから早いもので一回忌がやってきました。この日は墓参りと父が残してくれた不思議な人との出会いがありました。そして、こんなことが本当に起きているのだろうか。と思えるような事がおきたのです。
訪問者
霊園から戻って来ると、玄関脇に私たちを待っているかのように中年の女性が一人立っているのがわかりました。
声をかけると。
振り向きざまに、
「あなた、こうちゃん。あ、すいません・・・幸一さんですか」
と問い掛けてきたのです。
「はい」と返事を返すと、
「お父さんには生前中大変お世話になりました占い師の高橋美玲と申します。あなたの事はよくお話になっておられましたので、よく存じております。ほんの少しだけお時間をいただけませんでしょうか」
そこで「立ち話でしたら」と承諾をいたしました。
すると、こう話しだします。
「今日はあなたのお父さんの一回忌です。それと同時に、あなたのおばあちゃんの33回忌の命日でもあるのです。この事を知らずにいませんでしたか。
あなたが個人的にお墓参りをするのもいいのですが和尚さんを交えながら追善供養をなさるようにしてください。この日程については和尚さんとご相談のうえお決めください」
こう伝え終わると、自らの名刺を差し出して立ち去っていきました。
結果
先ほどの件を調べてみたところ確かに、あの方の言う通り祖母の命日でした。そして翌週、言われたとおり父と祖母の追善供養をおこなってきました。ここから3か月が経過し秋の日差しを感じたころです。
また、あの女性が現れたのです。
今度は何のために・・・と思ったときです。
こう話し始めます。
「約束どおり追善供養をおこなってくださいましたね。今度は過去帳をお書きください。難しいことはありません。この書き方は寺の住職が教えてくださいます」
こう言い終わると、またすぐに立ち去っていきました。
翌日、この書き方を教わり仏壇の真ん中に立てかけます。そしてこの夜のことです。父が夢の中に現れ感謝の思いを伝えてきたのです。
そして翌朝、仏間に行くと線香の香りとはちがう甘い香りが漂っているのが感じられました。もしかすると、ここに父がいるのだろうか。このような思いを感じている時です。母がここに入ってきてこう言うのです。
「今朝、お父さんが夢に出てきて”ありがとう”と言っていましたよ」
私も同様なことが起ったことを伝えると。母は涙をながしながらこう言います。
「あの占い師の方が今度お見えになったらお礼をしなければなりませんね」
そしてあの占い師の高橋さんとの今後のお付き合いについても話しあいました。
「父も生前中相談相手としてお付き合いがあったように、今回は色々な事を教えてくださいました。私達も継続していきましょう」
となりました。
恐怖
その時です。
突然、仏壇のろうそくの火が風もない中スーッと消えていったのです。それも2本とも同時にです。これは何を意味しているのか。2人の間では結論が出ませんでした。
このあと私は交際している女性がいることを伝えます。そして、ここ一週間ぐらいの間に自宅に連れてくる事を約束しました。
ここから2日後、彼女が母にお会いできるならプレゼントを差し上げたい。と言い出しましたので一緒に買物に出掛けることにしました。
2人で渋谷を歩いていると後方から女性の声で私を呼んでいる声が聞こえてきました。誰だろう。と思いながら振り向くと、あの占い師の高橋さんです。
”え〜なんでここにいることが分かったんだ。それも後姿だけで・・・”
そして連れの彼女を紹介しようとしたその時です。
目を大きく見開きながら至近距離で彼女の目の前に立ちはだかったのです。そして顔を舐め回すように見はじめると、今度は首が伸び左側面、後、右側面と移動していったのです。
それはまるで、ろくろ首の妖怪女のようでした。
あまりにも恐ろしくなり彼女の手を取り逃げだしていました。この現象は私だけが見た錯覚だろうと思っていたのですが、それは違いました。彼女も同じものを見ていたのです。
間違いなく、あの占い師は人間の姿をした妖怪です。
翌日、母の元へ彼女を連れていきました。初めての挨拶の後、プレゼントのネックレスを手渡します。そして昨日の占い師の事を話しはじめたのです。この事を聞いていた母はこう言います。
「友人に霊的カウンセラーを知っている方がいますので連絡を入れておきます。今日にでもいってらっしゃい」
その正体
墨田区のカウンセラーの事務所を訪れ今までの経緯をすべて話しました。すると、思いもよらぬ回答が返ってきたのです。
「確かにこの女性は念が強い方のようですが悪い念の方があまりにも強すぎます。近い将来、あなたのパートナーとなるべき方だと知っていたようです。
そしてどのような人間なのか、その程度を見極めていたのです。場合によっては利用してやろう。と思っていました」
「あの仏壇のろうそくの灯を消したのはお父さんです。生前中は確かにお付き合いがあったようです。でも生理的に合わず避けていました。この方だけは絶対に注意しなさい。という知らせでした」
「この女性はお父さんが亡くなった事を知り、さも近しいお付き合いをしていたかのように近づいてきたのです。隙を見付け中に入り込もうとしていました。
あの祖母の命日は今まで得た情報を元に知っていただけです。あの方はそんなに多くは来ないと思いますがまた現れますので、すべてお断りしてください。外であっても上手にお断りしてください」
ここから6年が経過し父の7回忌が1か月後にせまってきました。そしてその女性は我が家に一度も訪れることはありませんでした。この間、女の子2人に恵まれ団らんの日々を過ごしております。
そんな1週間ほど前のことでした。
5歳の長女がこのような事を言い出します。
「パパ。私は怖くて夜眠りたくないの。変なおばさんが夢に出てきて私の頭を叩くから」
「そのおばさんって、どんな人なの?」
「とっても首の長いおばさんだよ」
コメント