心の中のもう一人が教えてくれたあの性格(後編)

 前編はこちらになります。

カルテ9「格闘技と出会った瞬間から寝ても覚めてもこのことばかり考える毎日が過ぎていきました。そしてこんな楽しい日々がつづく中、なぜ、ここまで夢中になれるのだろう。と思うようになっていたのです。いったい、何がそうさせているのか」

前世

・(カウンセラー)将来の職業にあなたは格闘技を選びました。それはただ単に好きだったから、このような思いで選んでいます。しかし、これには、遥か遠い過去の出来事が大いに関係しているのです。

まずは、この事を知る必要があります。

「時代は1200年代の鎌倉です。1人の僧が過酷ともいえる修行に日々向かい合っています。狭く暗い洞窟の中での座禅や滝に打たれたり険しい山を登ったり数え切れぬ難行に挑んでいます。この方が、この当時のあなたになります。」

この厳しい修行は前世だけのものだけではなく、今世、あなたがおこなっている格闘技の厳しくつらい孤独での練習も、すべて前世の続きをおこなっているにすぎません。

リングの上での相手との戦いは己の煩悩との戦いでもありました。負けた時は、この時はこの時で、もっと辛い練習を己に課せていました。これも修行だからです。

すべてが孤独の中での戦いであり、格闘家ではなく僧としての思いで練習やリングに立っていました。

選択

それに、あなたは極度の閉所恐怖症のはずです。

そうではありませんか。(本人深くうなずく)

なぜ、このような事を尋ねたのかと言いますと。前世の修行時代に狭く暗い洞窟の中で瞑想をおこなっている最中に衰弱死をしているからです。なぜ、ここまでして修行をしなければならなかったのか。

それは本当に些細な過ちからはじまったのです。

「とある日の事です。庄屋の主人が村の衆に伝えてもらいたいことがあるとのことで、今月の当番である大工の棟梁のあなたに(豊作祈願の延期)を伝えにきました。そして次の日の事です。いつもの仕事に加え、他の仕事の依頼も加わり大忙しの毎日がはじまっていきました。」

「ここから3日後のことでした。庄屋の主人は伝えた約束通りに村の神社で神主と2人で待っていたのですが、誰一人として来るものがおりません。そこで巫女をあなたの元に走らせます。ここで大慌てするのですが、もうすでに遅し。うっかり忘れてしまっていたのです。」

「神主の事情で村の豊作祈願の前倒しの伝達だけだったのです。また日にちを改めればよかったのですが、責任感の強い大工の棟梁はこれを大きな過ちととらえ、ここで、お詫びのために選んだのが僧の修行でした。」

「この決断に困ってしまったのが家族です。まったく収入のあてが無くなってしまい、ここから地獄のような日々がはじまっていくのです」

 今世の修行

・(カウンセラー)今の内容をお聞きになった際、自分に共通する部分が幾つかあることに気が付いたはずです。その中で一番重要な箇所は家族愛に欠けているところです。ここのところを学ぶために今世に降りてきました。

そして修行が日々つづいていくのですが、どうしても人との触れ合いを苦手としていました。大なり小なりの災難が起ったとしても他人の助けを必要とせず、すべて自分の責任において処理してきました。その当人が名乗りでても受け付けを拒否するほどでした。

このような調子でしたので、家族に対しても同様な対応で事を済ませていました。これではいけないと理解していても行動に移すことができずにいたのです。

ここの部分を成長させるため今世に降りてきましたので、少しでも理解があるのであれば、改善の可能性はあります。あとは意識を変えるだけです。

守護するもの

・(カウンセラー)つづいて戦いの件についてお伝えいたします。

リングへ向かう前に奇抜な衣装に身を包み入場するパフォーマンスを取り入れています。これは顧客のボルテージを高めるためだと先ほど言っておりましたが、実は、あなたの守護霊が戦う前の儀式として取り入れたものだったのです。

この方は能楽師でその存在感が強く影響を及ぼしていたからです。最初にお面をかぶるこの行為はここからきています。

そしてゴングが鳴り響いた瞬間、リングでの舞いがはじまります。

さらにもう1人おります。平安時代の方で十二単を着ている公家女子になります。気品に満ちていて風格もあり芸術に優れた才能を兼ね備えた方です。この方々が協力しあい試合ごとの演技構成を組み立てていました。

あなたがいつもと違う閃きと出来栄えに驚くことがしばしばありました。それは、ここからきていたのです。

新たな芽生え

・最後にもうひとつ。あなたは今、新たなる魂の転換期に立たされています。ここから進んでいく人生にあたって目指す目標がいくつか出てきます。そのいずれかを選択しなければなりません。どれを選んでもかまわないのですが、絶対忘れてはいけないことがあります。

それは”家庭愛”です。これをおろそかにしてはいけません。

前世では家族の生活の手段を考えることなく自らの修行を優先しました。その結果、家族はどん底生活を味わうことになるのです。

このことから現代では世間一般的な生き方や考え方を学ばせる必要がありました。こうする事により、他人の事を優先するような考えが育っていき、慈悲の心が芽生え始めていくからです。

将来の計画

・この事を聞いたあとでした。相談者がこのような事を言い出します。

「実はかねてから計画をしていることがあります。それは大都会からの脱出です。学生の頃から感じていたのですが、どこに行っても人、人、人で溢れかえっています。本当にこの人だかりにはうんざりです。

先ほどの話しの中の家庭愛の修行のことになりますが、現在計画している人気の少ない小さな村でおこなってみようかなと思いつきました。ここでしたら、余計なストレスも感じることなくゆったりと出来ると思いますので」

恐怖の記憶

・(このことにカウンセラーが)なぜ、あなたは人混みの中を嫌うのか。ここから説明いたします。

遠い記憶の中に今なお消えずに存在しているものがあります。

それは人間嫌い。

なぜそうなったのかと言いますと。人の手によって殺された回数が多いことです。中には複数名による撲殺も数回ほどあります。さらに獄中での拷問による死も何度か、これだけの事があれば対人恐怖症にもなり、都会の人混みの中を避けゆったりと1人暮らしをしたくもなります。

でも、これではいけません。人混みを避けるのではなくこの中で今世の修行をなさってください。こうする事により対人恐怖症は改善されていきます。

セカンドキャリア

ここから2か月が経過しました。彼はリングの中央に立ち、鳴り響く10カウントのゴングを聞いていた。うっすらと笑みがこぼれる、その顔には何とも言えないほどの輝きがありました。

「good by Ring!」

もう何も悔いはない。

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